本って素敵

答えより問いを探して 17歳の特別教室  高橋 源一郎著

何気なく聞いたこの本がすごかった。ハスちゃんには今、そしてカメちゃんにも中学生になったら絶対に読んでもらおうと思った。

何か所かとっても印象的だった箇所がある。

昔は良く、キツネやタヌキに化かされた、という話があった。昭和30年ころまではそんな内容のニュースが誌面を賑わしていた。そしてそんなニュースは消えた。急にキツネやタヌキが化かさないようになるとは考えにくく、変わったのは人間の方。人間が感性を失ったと考える、との記述。本当にそうなんだと思う。

高橋さんは、大学で教員をされていて、小説家だから文章の書き方を指導されていた。学生にもちろん文章を書かせる。けど、一切添削はしない。文法の誤りも、誤字脱字も一切。それをしたらその時点で、書き手の作品ではなくなる、と。私はハスちゃんカメちゃんの作文を先生が添削することを嫌悪している。何を偉そうに!何の権利があって!と言わないけど思ってしまう。

高橋さんが先生と仰ぐ偉大な小説家が、老い、認知症を患い、でも書くのをやめなかった。認知症ということもあり、各内容がめちゃくちゃで、事実が間違っているレベル。でも、それをその小説家は修正させなかった。なぜなら書いた時点で僕はそう思っていたから、それでいい、とのことで。それでいいんだなぁ、とじーんとした。

そして戦後だったか、農家に生まれて働きづくめで生きた女性の話。晩年ケガして働けなくなった女性は寝たきりに。そして生きる意味を見失い自殺を決意。遺書を準備する為に文字を習い始める。孫娘から。その遺書は、ひらがなばかり、急にカタカナが入ったり、文法もめちゃくちゃ。だけれども、この女性が書いた文章は胸を打つ、これ以上に伝わる文章はない、と高橋さんは称した。

何か明確な目的をもって書かれた文章。それ以上、人に感動を与える文章はない、と高橋さんは言う。

しっかりと、目的を持って、書いてゆきたいなぁ。