先生

カメちゃんは入学時、ひらがなの読み書きはできなかったし、もちろんさんすうのお勉強も一切させていなかった。年長のカメちゃんを見ていて、私はまだこの子には小学校でお勉強させるのは早すぎると感じていた。カメちゃんは、何かどんくさいところがあったり、周りの空気を全く読めなかったり、天然で天真爛漫で野生、そんな感じの子。
私はカメちゃんのそういう所がむしろ素敵だと思っていた。 多分”天才”ってこんな感じなんだろうな、という無限の可能性を感じさせてくれる子でもある。

学校に入ったら、そんなカメちゃんの持ち味を消されてしまうのでは、という怖さがあった。で、1年入学を遅くしたらどうだろう、とか考えていたくらい。

かっこいいでしょう?

奄美大島でも秘境といわれる田舎の、小さなちいさな小学校に入学した。担任の先生には、カメちゃんの成績は気にしないから、勉強が嫌いにならないようにして頂きたいとお願いした。1年生は2人。唯一の同級生は自閉症だったので、 さんすうやこくごのお勉強は カメちゃん1人で受けていた。

入学して「お勉強いやだ、ぼく遊びたい」「さんすうと、こくご、きらい、やりたくない」としばらく言い続け、時間割を見て、今日は行かない!と休んだ日もある。担任の先生には、カメちゃんが算数と国語が嫌だと言って学校に行きたくないと言っていると、ちゃんと伝えた。そして何度も何度もこう伝えた。

“カメちゃんが今算数や国語ができなくても問題ないので、できるようにしようとしなくていい。先生はやるべき授業内容をさらっとして頂くだけでいい。カメちゃんが理解してなくても今はそれでいい。とにかく、計算や漢字をたくさんやらせることは控えて下さい。勉強嫌いになるのが怖いので。結果(成績)については親である私が責任をとりますから安心してください”

国語算数は、一人で授業を受けていたから、先生は多分不本意ながらも私の願いを受け入れ、やるべき内容をやり、時間が余ったら、カメちゃんが読みたい本を読んでいいとしてくれた。これはありがたかった。だから、何とかカメちゃんは勉強嫌いにはならなかった。

じゃじゃーん

それどころか、テストの点数もめちゃくちゃいい。学校ではカメちゃんは才能発揮することはできないだろうと思っていたから、これは驚きだった。カメちゃんは1度説明したらすぐに理解できる子だと先生も言ってくれた。で、できてしまうと、先生はもっと、どんどんやらせようとするけど、それをしたらカメちゃんは、嫌がる。その嫌な部分を阻止できてよかったのかも。

感じたのは、私の子育て方針を先生に理解して頂くことのむつかしさ。先生は、とにかく計算も漢字もたくさんやらせたい。単純反復で身に着ける、という考え方。だから、私が計算や漢字をたくさんやらせないでください、と言うと、きょとん?とした反応が返ってくる。理由を含め何回か話すと、ようやく少しわかって下さるという感じ。先生って、真面目に勉強してきた人達だから、余計に伝わりにくいんだと思う。